放送コンテンツ適正取引推進協議会 推進計画(2024年度)【2024年4月22日】
(1) 業界全体への普及促進策の浸透に向けた取り組み
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構成団体傘下の事業者等の全体で法令やガイドライン等を定着・普及させるための啓発活動を推進する。
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協議会には放送事業者、番組製作会社、双方の主要な団体が参加しています。そのメリットを活かし、下請法や独占禁止法などの関係法令と、総務省の「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」(以下、総務省ガイドライン)を構成団体傘下の事業者等の全体に普及させるための活動を行います。
2020年9月30日に公表された総務省ガイドライン第7版、または2024年度に改訂予定の新版、および関係法令等を協議会や各構成団体が主催する研修会等で周知します。
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ガイドライン等の周知徹底により、ガイドライン等に対する認知や認識、実務の均一化を図る。
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ガイドライン等が遵守され、適切に履行されるためには、放送事業者と番組製作会社の双方で、それらの内容についての認知や認識がそろい、実務の均一化が図られることが重要です。協議会の各構成団体では、そうした認識のもとで傘下の放送事業者・番組製作会社の双方にガイドライン等のさらなる周知を図ります。
総務省ガイドライン第7版(69~70ページ)では「下請事業者の働き方改革を阻害し、不利益となるような取引や要請は行わないこと」と明記され、「下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準(以下、「振興基準」)」の条文が引用されています。協議会では、働き方改革に関する諸課題等についても研修会等で周知していきます。
内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省による「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(2021年3月)や、2024年11月に施行予定の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)、これらに伴う総務省ガイドライン改訂の検討状況を踏まえ、法令遵守や注意が必要であること等を周知します。
内閣官房、消費者庁、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、公正取引委員会による「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」(2021年12月)や、内閣官房、公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(2023年11月)、また、これらの趣旨を反映した「振興基準」等を踏まえ、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を取引価格に反映しない取引は、下請法上の「買いたたき」に該当するおそれがあること等について、法令遵守や注意が必要であること等を周知します。
「振興基準」の遵守にあたっては、サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指すために政府が促進している「パートナーシップ構築宣言」の実施が方策となり得ることから、同宣言の普及に努めます。
また、中小企業庁が実施した下請Gメンのヒアリング(2023年度)の改善指摘を受け、取引対価や仕様、知的財産の取引条件等の発注内容は、「振興基準」等の内容を踏まえ、十分に協議したうえで明確化・決定が図られることが必要であることをあわせて周知します。こうした取り組みにあたっては、本推進計画の別紙「放送コンテンツ業界における適正取引のさらなる推進に向けて」を策定し、その強化を図ります。
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構成団体傘下の事業者等ではない総務省「放送コンテンツ製作取引実態調査」の対象事業者に対しても広く同調査を周知し、回答率の向上を図る。
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毎年度実施される総務省の「放送コンテンツ製作取引実態調査」(旧称ガイドラインフォローアップ調査)の結果は、放送事業者、番組製作会社の双方にとって、それぞれの業界内でのガイドライン等の認知度や法令等の遵守、履行の状況が的確に把握できる、有用な情報といえます。
その一方で、仮に、各事業者が調査への回答を行う際に、ガイドライン等の内容を正しく理解しておらず、設問に対して正確に回答できない場合には、回答の精度が確保できず、調査の信頼も損なわれることにも繋がります。発注元が放送事業者に限らない受注側ではなおさらです。そのためにも、ガイドライン等の内容を周知徹底することにより、ガイドライン等に対する認知や認識、実務の均一化を図ることが重要といえます。
このため、協議会ホームページや協議会主催研修会等において、構成団体傘下の事業者等ではない総務省フォローアップ調査の対象事業者に対しても広く同調査を周知し、回答率の向上を図ることとします。これにより幅広く番組製作会社の実態が把握できるとともに、より実態に即した調査となることが期待されます。
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支払条件の改善に向け、約束手形の利用に関する政府方針等の周知を図る。
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手形等による下請代金の支払について、「振興基準」では、手形等のサイトを60日以内とするよう努めること、割引料等のコストについて親事業者と下請事業者が具体的に検討できるよう、下請代金の額と分けて明示することが求められています。また、手形通達(2021年3月改正)において、2024年までに手形等のサイトを60日以内とするよう示されています。協議会では、これらの政府方針について研修会等で周知していきます。
また、約束手形から現金払への移行を進め、政府方針の「2026年まで」に約束手形の利用を廃止するよう、構成団体傘下の事業者への働きかけを行います。
あわせて、中小企業庁が実施した下請Gメンのヒアリング(2023年度)の改善指摘を踏まえ、下請法等の対象取引は、受領後60日以内で定める支払期日までに下請代金が支払われる必要であることを改めて周知します。こうした取り組みにあたっては、本推進計画の別紙「放送コンテンツ業界における適正取引のさらなる推進に向けて」を策定し、その強化を図ります(再掲)。
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前記の事項を達成することを目的に、協議会主催の研修会を開催する(年間1回程度)。
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これまで関西地区(2018年度)、東北地区および東海地区(2019年度)を対象とした研修会、新型コロナウイルス感染症対策のためのオンライン研修会(2020~2022年度)を実施し、2023年度には対面(東京)/ウェブ併催のハイブリッド形式での研修会を開催しました。引き続き業界全体への普及促進策の浸透に向け、研修会の開催を継続して参ります。
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業界全体への効果的な普及、啓発のため、下請法管理ツールを活用する。
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「下請法管理ツール」(Microsoft Excel 64ビットと32ビットの両方に対応)の活用について構成団体を通じて促し、実際の取引現場でも法令に即した運用が簡便にできるようにサポートします。
(2) 協議会テキストの提供、研修会等での活用
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協議会テキスト(「よくわかる放送コンテンツ適正取引」)を各構成団体での頒布や、協議会ホームページに掲載し、研修会等の教材として活用する。
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協議会テキストは、総務省ガイドライン等の見直し時期と協議会主催の研修会での活用などを見極め、計画的に改訂を行う。
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引き続き相互理解の増進にポイントを置いた「協議会テキスト」を頒布し、受発注双方の現場で使用するとともに協議会主催研修会および各構成団体主催研修会等の教材として活用します。
(3) 業界団体等が開催する研修会・説明会のスケジュール共有
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構成団体、総務省、公正取引委員会、中小企業庁が主催する研修会等のスケジュールを把握し、整理したうえで、協議会主催研修会を適切な時期に開催するとともに、構成団体傘下の関係者に対して、各研修会の年間を通じての開催情報を提供し、参加機会の向上に資する。(前記(1)および(2)参照)。
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下請法や独占禁止法等に関する研修会や説明会は、協議会の構成団体をはじめ、関係省庁なども含めて、さまざまな機関で実施されています。外部機関が実施している研修会等では、内容が必ずしも情報成果物作成委託や番組製作に関わる役務提供委託に特化されたものではないものが多いことや、開催時期や開催場所がワンストップで情報収集できないことなどから、日常の業務が多忙なスタッフにとっては、事前の日程調整が難しいなどの面がありました。協議会では各機関の研修会等の開催スケジュールを情報提供し、より希望者が参加しやすい環境を整備してまいります。
(4) ベストプラクティスの収集・共有
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総務省フォローアップ調査の結果にみられる下請法の取引の現状に対する放送事業者側と番組製作者側の意識と回答数値の差の所以を探り、相互理解を深化させ、適正取引の一層の推進を図る。
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放送事業者側と番組製作者側の双方におけるベストプラクティスを収集する。
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総務省のフォローアップ調査の結果は、放送事業者、番組製作会社の双方にとって、それぞれの業界内でのガイドライン等の認知度や法令等の遵守、履行の状況が的確に把握できる有用な情報ですが、それも、実態に即した回答がなされてこそのことといえます。そのためにも、ガイドライン等の周知徹底により、ガイドライン等に対する認知や認識、実務の均一化を図ることが重要です。また併せて、総務省フォローアップ調査の結果にみられる下請法の取引の現状に対する放送事業者側と番組製作者側の意識と回答数値の差の所以を探り、協議会においても忌憚のない意思疎通が行われることで、いっそうの相互理解の深化と適正取引の推進が期待されます。
(5) 推進計画のフォローアップ
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推進計画の実施後、適宜フォローアップを行う。
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協議会では以上の取り組みについて、準備の整ったものから順次進めることとし、適宜フォローアップを行って参ります。
各年度にフォローアップアンケートを実施し、ガイドラインや協議会テキストの周知状況等を調査・把握します。
研修会開催時には、参加者アンケートを実施し、現場担当者の意見や声を直に拾うことで、研修会のさらなる充実を図ります。
政府等の動きを踏まえ、必要に応じて随時、推進計画の見直しを検討します。
放送コンテンツ業界における適正取引のさらなる推進に向けて
2024年4月
放送コンテンツ適正取引推進協議会
中小企業庁が2023年度に行った下請Gメンのヒアリングでは、放送コンテンツ・アニメーション等業界において、「取引対価」や「価格交渉」などの取り組みに関し、改善の指摘を受けたことを踏まえ、当協議会の推進計画でさらなる取り組みの強化を図るため、構成団体傘下の事業者等の全体で、以下の事項の周知を図ることとする。
こうした適正取引の推進に向け、構成団体傘下の事業者は、自社内のみならず取引先に対しても周知を行う。また、構成団体における「取引適正化」について議論する委員会等の場で、各事項の周知状況について確認を行う。
1.取引対価について
<指摘事項>
発注内容が曖昧な契約とならないよう、十分な協議を行った上で、契約条件について書面等による明示及び交付が徹底されることが必要。
取引対価については、合理的な算定方式に基づき、下請事業者の適正な利益を含み、スポンサー等にも働きかけつつ、十分に協議して決定されることが必要。
<対応方針・改善方針>
親事業者において実施しない事項
一律に一定比率で単価を引き下げて下請代金の額を定めること。
コスト削減効果を十分に確認せず、取引対価の低減を押し付けること。
下請事業者の努力によるコスト削減効果を、一方的に取引対価の低減に反映すること。
親事業者において可能な限り実施する事項
下請事業者への発注にあたっては、発注内容、納期、価格、付随費用、支払手段、支払期日等の契約条件について、書面等(電子メールその他の電磁的記録を含む)による明示及びその交付を徹底する。
取引対価の決定においては、合理的な算定方式に基づき、下請事業者の適正な利益や管理費を含み、下請事業者における賃金の引上げ、労働時間の短縮等の労働条件の改善を検討できるよう、十分に協議して決定するように努める。
取引対価における価格転嫁の取り組みに関し、関係各方面の理解醸成に資するように努める。
2.価格交渉について
<指摘事項>
取引対価は、合理的な算定方式に基づき、下請事業者の適正な利益を含み、賃金の引上げ等が可能となるよう、放送局への働きかけも行いつつ、十分に協議して決定されることが必要。特に、ガイドライン記載のとおり、番組改編期や、新しい企画ごとに、単価を見直すことを徹底することが必要。
<対応方針・改善方針>
親事業者において実施しない事項
目標価格又は価格帯のみを提示して、それと辻褄の合う内容の見積り又は提案を要請すること。
もともと転注※するつもりがないにもかかわらず、競合する他の事業者への転注を示唆して殊更に危機感を与えることにより、事実上、協議をすることなく、親事業者が意図する取引対価を下請事業者に押し付けること。
(※従来行っていた発注を別の取引先に転じること)
競合する他の事業者が取引対価の見直しの要請をしていないこと、親事業者の納入先が取引対価の見直しを認めないこと等を理由として、協議を拒むこと。
親事業者において可能な限り実施する事項
長年の慣行で、相場が定まっている単価等についても、下請事業者の申し出に応じて、協議を行うように努める。
3.仕様変更・契約条件について
<指摘事項>
親事業者は、仕様等を明確にして発注することが必要。また、仕様等を変更するときは、下請事業者に損失を与えないよう十分に配慮し、追加費用は親事業者が負担することが必要。
<対応方針・改善方針>
親事業者において実施しない事項
下請事業者に見積りをさせた段階より発注内容が変わったにもかかわらず、下請代金の額の見直しをせず、当初の見積価格を下請代金の額として定めること。
親事業者において可能な限り実施する事項
当初の発注段階で下請事業者と十分に協議のうえ、仕様等を明確にして発注するように努める。
仕様等を変更するときに、下請事業者に責めがない場合は、追加費用は親事業者が負担するように努める。
4.支払条件
<指摘事項>
下請法及び振興法の対象取引については、受領後60日以内において定める支払期日までに下請代金が支払われることが必要。
ガイドラインの記載のとおり、「放送日」起算ではなく、「受領日」起算に変更する取組みが必要。
<対応方針・改善方針>
親事業者において実施しない事項
下請法及び振興法の対象取引について、支払期日(受領後60日以内)を超えて支払うこと。
親事業者において可能な限り実施する事項
「放送日」起算ではなく、「受領日」起算に変更するように取り組む。
5.知的財産の保護について
<指摘事項>
知財の取引条件が明確化、適正化されることが必要。特に、完パケについて、自主行動計画の中で、著作権の帰属についての判断基準が明確化されることが必要。
<対応方針・改善方針>
親事業者において実施しない事項
知的財産権について、無償による譲渡を強要する、または相当の対価を支払うことなく親事業者に持分の全部または一部を帰属させることを強要すること。
知的財産権の対価について、下請事業者と協議することなく、一方的に通常支払われる対価より低い額を定めること。
親事業者において可能な限り実施する事項
知的財産権の取り扱いは十分に協議したうえで、契約内容を明確化し、書面等により明示するように努める。
著作権の帰属については、総務省「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン(改訂版)【第7版】」(以下、総務省ガイドライン第7版)の解説などの周知に努める。
6.働き方改革
<指摘事項>
働き方改革による下請事業者へのしわ寄せ等の不利益を与え、又は、下請事業者の働き方改革を阻害するような取引、要請を行わないことを徹底することが求められる。
<対応方針・改善方針>
親事業者において実施しない事項
短納期または追加の発注、急な仕様変更等を行う場合に、下請事業者が支払うこととなる増加コストを下請事業者に負担させること。
親事業者において可能な限り実施する事項
自らの取引に起因して、下請事業者が労働基準関連法令に違反することのないよう十分に配慮して、下請事業者と取引を行うよう努める。
研修教材・説明会などについてのお問い合わせは共同事務局まで